メディアリテラシーと経営スキル(東芝メモリをめぐる報道から)

10年後の未来

今朝も北朝鮮からミサイルが発射された。テレビやSNSのタイムラインを見る限り、いまにも戦争が起こりそうな雰囲気である。とある広告代理店は、韓国への出張が禁止になったらしい。その反面、自分の身の周りは、のんびりしている。週末、ソウルに旅行するものもいる。

さて、この身の回りの静けさとメディアのうるささ、どちらに身を委ねたほうがいいのだろうか。それを決めるのは、各々自分である。いろんな情報を手にいれて自分で判断する。これを、メディアリテラシーという。

それでも判断基準が「テレビが言ってるから」「周りの誰も騒いでないから」といった周りの状況をそのまま受け入れたものになりがちである。それでもいい人もいるだろうが、このコラムの読者である若き経営者の方々がそうだとしたら、ちょっともの足りない。

メディアリテラシーとは、正しいニュースを見分けるだけでなく、いろんな視点を理解しながら、自分の進む道を決めることである。なんて、偉そうなことを言ったが、知らずにメディアに影響されていることはよくあるし、いろんな意見に触れる機会が減ってるのが、昨今のネット界隈である。

では、メディアリテラシーを磨くにはどうしたらいいか。ちょうどいい素材を、最近よく見かける。「東芝メモリ」を巡る報道である。

読者も「東芝メモリ売却」が「迷走」とか「危機」といった見出しはよく見かけるだろう。ただ、メーカーに勤める読者以外は、馴染みのない企業や製品名が出てきて、よくわからないまま読み飛ばしている人が多いのではないだろうか

この件の揉めどころは、東芝と提携していた米国WD社が、自社に相談なく売却話を進めていると怒り、裁判に訴えているところにある。

ただ、大企業だし、国も絡んできてるぽいし、ビジネス視点でない記事が氾濫している。それが、却って、いろんな視点からの記事に触れるいいきっかけとなっている。

「海外売却は技術流出だ」という立場で書かれた記事もあれば、「株主価値を毀損している」という投資家目線、また「半導体技術者にとって国は関係ない」という技術者の視点で書かれたものもある。

忙しい読者は、ニュースアプリで配信される見出しや友人がシェアしている記事だけを見るだろう。すると、特定の視点、たとえば「米国WD社が難癖をつけている」とか「東芝経営陣が不甲斐ない」のような、どちらかというと否定的な見方で終わってないだろうか。

そこで、ぜひ技術者寄りの記事を見つけて読んでみて欲しい。そうすれば、これから迎えるIoT時代が、真の情報爆発の時代であり、そこにビジネスチャンスを見出し半導体メーカーの競争が激化していることに気づくだろう。中国企業が何兆円も工場に投資し、その周りに学校や住宅地などの街を作っていることなどもわかる。

いま30代の人には実感がないと思うが、日本も半導体(つまりデジタル市場)市場で世界トップだった時期もあったし、2000年前後は、米国のケータイはアナログ(ガラケー的な)が主流で、とても遅れていた。

いまでは、日本人がアップルやサムスンのスマホに米国発のSNSを使っている。改めて振り返ると恐ろしい変化である。若いときは、「そんな20年後なんて」と思うだろうが、この長寿社会、50歳近くなっても、まだ生きていかねばならない。そのときのことを自分なりに予想しておくのは、そんなにムダなことではないだろう。

情報を集めて、自分で判断する「メディアリテラシー」を磨くことは、経営判断の基礎を磨くことにもつながるハズだ。

(初出:マスメディアン 未来のメディア、AD・HRニュース 2017.9)

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