アメリカの地デジ移行から学べること

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■ アメリカの地デジについて 

・  地デジ移行、最大の意味は、モバイル系映像サービスの発展への舵取り

・  今後、LTEなどモバイル映像サービスが成長するだろう 

     ⇒  地デジ移行後のメディア地図をp.34にまとめた。また、テレビ局関連のカンファレンス、NAB2009でもモバイル関連セッションが盛り上がった。セッション内容のまとめは、ここにまとめた。(左:ラスベガスFOXチャンネルの 地デジ移行「ソフトテスト」の告知CM。アナログ電波をストップする。2009年1月) 


・  米国地デジ移行、最大の背景は、1980年代-90年代の双子の赤字、財政均衡を図るために、電波をオークションで売却、収入を得るため 

     ⇒ 米国政府はオークションで195億ドルの収入を得た。関連資料、出典は、p.19にまとめた

・  一致団結してから2年くらいかかる。NAB、CEA、NTCAなど関連業界団体の足並みが揃ったのは、2007年頃から。それでも、移行直前の2ヶ月前から、地デジ移行再延期の気運が高まり、結局4ヶ月延期された

     ⇒  p.8、p.13にアメリカ議会、FCC、関連業界団体の関係性を時系列でまとめた。FCCは、委員長を含め5人体制。委員長任命権は大統領にある。ので、たいてい、委員長+2名が大統領と同じ党、他の2名が違う党の委員となる。オバマ政権のゲナコウスキーFCC委員長は、IAC役員(あのバリー・ディラーの会社ですね)などを歴任、ネット業界に詳しいFCC委員長となる。ブッシュ共和党政権は、大型合併など大手企業寄りの政策、オバマ民主党政権は、ネット業界寄りの政策をとると言われている。また2008年12月から2月までの地デジ移行再延期の出来事はp.16に

     ⇒  そのゴタゴタのさなかマーチン委員長とCEAシャピロ会長の議論のまとめは、p.17または下記動画参考

・  これは、共和党から民主党オバマ政権に代わったことの影響も大きい 

     ⇒  p.6米国政権、FCCの流れをまとめた

ロサンゼルスの友人(日本人:25歳)は、アンテナでテレビを見ている。地デジ移行後も、まだテレビは映っているという。彼は移民で低所得者層に入るのだろうか。iPhoneは持っているし、車もある。インターネットもタイムワーナーの40ドルプランに入っている。テレビを見ることが無いので、特にケーブルに入る必要もない、という。実際のところ、テレビの存在はこんなところだろう。地デジ受信できない=弱者とひとくくりにはできない。(2009年9月24日)

サンタ・モニカのBest Buy(家電量販店)に積まれた地デジ用コンバータ

地デジ移行について地上波が流していた告知、アメリカ ラスベガス 2009年1月

地デジ移行について地上波が流していた告知、アメリカ ラスベガス 2009年1月

オバマ大統領が誕生間近、去就が取り沙汰されていたFCCマーチン委員長が、CEAシャピロ会長の質問に答え、在任期間の施策について語った。CES 2009、アメリカ ラスベガス 2009年1月

参考: 

FCCケビン・マーチン委員長 @ CES 2009

デビッド・リール NAB会長 基調講演 @ NAB 2009

地デジへの切替 NMURA 2009年6月11日 アメリカ、地デジ切替についての印象(ニオ本語)

日本地デジ移行関連 メモ

  • 総務省、Dpa、デジサポなどのサービスは、ほぼ米国(Walk-inセンターなど)と同じ ⇒ 先行事例として研究し尽くしている。日本の地デジ移行パンフレットも、日本語、中国語、韓国語、ポルトガル語などを用意している
  • デジタル移行対策完了推進会議資料に、デジタル移行の目的、普及率、帯域利用の効率化などが掲載されている
  • 2009年6月末、デジタル機器出荷は5,300万台(テレビ3,300万台) (6月160万台)世帯普及率は、2009年3月末、60%。

■日本の地デジ移行、議論のポイント

消費者サイドから

・  アンテナ受信が多い日本では、デジタル受信をするためのテレビ買換えなどが必要だが、デジタル移行後のメリットが、買い替えのモチベーションとつながっていないため、デジタル移行が進まない ⇒ 米国の2000年前後と同じ状況 (p.8)

・  デジタルテレビ普及台数は伸びているが、現在デジタルテレビを購入している家庭は、1家2台買う(推測)ので、テレビ普及台数を半分にしないと、実際の普及世帯数を反映してないのではないか、という議論もある

行政サイドから

1)電波跡地をなぜオークション形式にしないのか?、2)無料放送なのに、なぜ顧客認証の仕組みB-CASをかませねばならないのか?、2点がよく議論されている。2点とも検索すればたくさんでてきます。

・  地デジ移行のコスト2,600億円、その費用をオークションで稼げばよい、という議論。総務省側は、比較審査をし、割当てをしたほうが事業継続などの心配がないという立場

・  CAS(Conditional Access System)というシステムにより、顧客データベースを構築、有料放送(WOWOWとか)の課金に効果的だが、フジテレビなどの地デジは無料。日本のCAS運営会社、B-CAS社の事業内容(売上・利益など)はこちら 無料広告放送のテレビ局がB-CASカード利用のために払う金額などが推測できる

・  FCC制度の導入。

■ 世界

・  デジタル移行完了国は、スウェーデン、フィンランド、スイス、ドイツ、オランダ

・  地デジ移行後モバイル放送規格は、日(ISDB-mm)、欧(DVB-H)、米(ATSC M/H)で3つの規格にわかれてしまった。

・  米国型は、韓国、フィリピン、台湾に、欧州は東南アジア、日本はブラジル、ペルー、アルゼンチン、チリ、ベネズエラ

・  中国の地デジ移行は2015年、韓国は2012年(最近2010年から延期)。韓国はケーブル普及率が85%。中国もほぼケーブル経由でテレビを見ている

・  フィンランド  Digita(フランスのTDF傘下)が2006年3月から20年間のDVB-H免許割当を受けている。18ch配信可能(技術的には24-30ch可能)。当面は、YLE、TV3、Nelonen、Voice TVの4chでスタート。有料サービス。現在人口の40%をカバー。

・  イタリア  Vodafone, テレコム・イタリアがサービス運用

■ 地デジ移行、日本の課題、世界の潮流

・  BRICsのケータイは、GSM=ノキアがシェアトップ。3年後、そういった国々で映像見るのにいちばん普及している端末は、なにかというとケータイ?そこで、次世代ケータイ放送の日本規格が孤立しているのは、メーカー、日本国にとって非常にツラい。今はまだあまり表面的になっていないが、10年後の家電市場のトップ企業は日本じゃなくなる可能性もある。

・  次世代家電はテレビからケータイになると思われる。映像制作、配信も、テレビ用だけでなく、パーソナル、リミックス、マッシュアップ、撮影、アップロードなどモバイル端末で可能になることを前提にすることが必要になる。

■モバイル映像配信について、海外コンテンツプロバイダがなにを語っているか?は、下記を参考■ 

スマートフォンの普及でオンライン文化が成長する OnMedia NYC 2009のNokia、Pandoraの議論

ブロードバンド化でコンテンツ消費方法に変化 CES2009

中国護国寺賓館(1泊4500円程度)のテレビ。60ch映る

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