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刺激的な放送インフラの話 外資CDN参入 ⇒ 配信コスト低下 ⇒ 広告モデル成立

 ■ 壁はカエルを茹でるのか

『テクノロジーの発展より規制が我々を発展させる』、とあるテレビ局の人が言う。米国のHuluの話を聞いたテレビ局若手は、『ウチの局はあと20年で終わりだな』、と言った。

1990年代、インターネットで国境は無くなる、と言われた。しかし、言葉、規制、決済、インフラコスト・・・色々な壁がインターネットにもある。その壁が、カエルを茹でるのか、茹る前に壊れるのか。

放送局の人は、ブロードキャストの優位性を疑わない。ところが、インターネットでもブロードキャストが可能になったら? CDN(Contents DelivaryNetwork)は、インターネットを映画や音楽を聞けるインフラに変える仕組み・・・

■ インターネットはもともと音楽や映画を見るものじゃないよね

テレビのリモコンを押すとすぐレッドシアターが見れる。それは、テレビ局のマスタールームから自分の部屋のテレビまで、色々な人や機械が働いている努力の積み重ねだ。映像を電波に置き換え送る機械、その電波を受け取る機械、再生する装置、間違った電波を受け取らなくするようなルール決めなど。届けられる番組はとっとこハム太郎でも、裏で動いている論理はオトナの論理だ。会社で80%の人が楽できるのは残りの人が陰に日向に働いているのと同じ原理で、簡単に映像を見られるということは、陰で誰かが働いている。。

その放送の仕組みと同じことをインターネットでもできないか?と考えた人たちがいた。パソコンのブラウザ、動画ビューワー、圧縮技術・・・・2000年以降いろいろなベンチャー企業がこの分野で起業した。そしてインターネット上で映像を途切れなく運ぶ仕組み。。。この仕組みがCDNだ。

今YouTubeを見たり、ニコ動で音楽聴いたりできるのは、CDNが、インターネットをテレビやラジオ音楽用に変えてくれているからだ。世界的に有名なのは、Akamaiという会社。他にもThe Platform, Limeright(ライムライト)といった会社が有名だ。日本ではJストリームが大手。

■ 外資CDNの進出で、日本の動画配信のコストが低下⇒広告モデルも成立へ?

2004年にボストンで起業したブライトコーブという企業がいる。ブライトコーブは、CDNとコンテンツ企業の間にたって、色々な調整や仕組みを提供する企業だ。彼らは映像コンテンツを持つ企業、メディアをお客さんにして、配信を仕切る。欧米のメディア企業800社が、ブライトコーブのクライアントになっている。その企業が2008年から日本でサービスを開始している。

ブライトコーブの商売は、コンテンツ企業からブライトコーブのコンテンツ配信の管理(テレビでいうマスター)、サーバー利用などを含めた費用をもらうことで成り立っている。

そこで、日本と外国の価格差があるのが配信インフラコストだ。ブライトコーブが利用するCDNは、LimelightやAkamaiなど米国企業である。アメリカ企業は、世界レベルで配信業務を請け負っている。その分、回線、サーバーの調達費用が安い。この価格体系は、日本が主な市場のJストリームなどにとって脅威となる。一説によると、ひとケタ、ふたケタ違うという。たとえば、1Gあたり10円が相場だろうか。ライムライトで7-8円。最安値で2円とか。。。日本で一般企業が動画配信をしようとすると、見積で250円程度で売っていた時期もあったように聞く。

日本でインターネットの動画配信が進まない理由は、「金にならない」からだ。金にならないから著作権も解決しない。その解決策が配信コストの削減だろう。広告で儲けるには、世界レベルのCDN価格まで下がらないと絶対ムリらしい。

こうした動画配信のプラットフォームを提供するベンチャー企業は結構ある。アメリカでは、Ooyala、Kaltura (Kalturaのミニインタビュー記事 ニューヨーク 2009年2月)など。とくにKalturaは、オープンプラットフォームながら、編集機能が素晴らしく、僕は注目している。

もうひとつ、テープのファイル変換作業、費用もバカにならない。2時間の映像をデジタルデータに落とすには、2時間再生する必要がある。ファイル容量も2時間の映画で50Gくらい。保管も大変だ。

■ いいコンテンツは、ショーシャンクの空を見るだろう

ブライトコーブは、安いCDNを利用し、アドネットワークとの連携など実務的に難しい機能を大手メディアに提供する。放送には国境、県境がある。インターネットに免許はない。放送インフラ、言葉の壁という有形、無形で守られてきた映像ビジネス業界は、CDN、動画配信プラットフォームによって、知らない間に穴が掘られ、いいコンテンツは壁を抜け、青い空を見るだろう。もっとも、肝心のコンテンツホルダーが、外を見たいと思えばだが。

★こうしたインフラ、インフラSI的な動向に関連して、オーバー・ザ・トップと言われるソフトウェアでネット動画配信の諸問題を解決しようとする方向性もある オーバー・ザ・トップのBoxeeとthePlatformの論争はこちら

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