ジュリウス・ゲナコウスキー、FCC委員長 ( Julius Genachowski, Chairman FCC ) NAB Show 2010, 2010.04.12,
■ マルチ・プラットフォーム時代の放送業界
– 今の子供は、自分が見ているテレビが、地上波なのかケーブルチャンネルなのか気にしたこともないだろう
– シリコンバレーのベンチャー企業が、プラットフォームとしてテレビ、ラジオが担っていたメディアの役割をプラットフォームとして代替しようとしている。
– 放送業界は、ブローダー・キャスティング(Broader-casting)としてマルチプラットフォーム展開をしなければならない。
– 米国をモバイルイノベーションのゆりかごになるだろう。
– いまは、将来のための布石を打つときだ。
– プラットフォームは、ユーザーが集まっているところに移動し続けなければならない。
– ローカルコミュニティとの結びつきも重要だ。
■ モバイル・イノベーションへの危機感&期待 ⇒ 高し
– 米国のブロードバンド普及率は15位、スピードは18位。
– 米国のブロードバンド普及が遅れているのは、他産業分野が世界でリードを続けるにあたりリスク要因になっている。
– モバイル・イノベーション以外に、米国がこれから世界をリードできるものはないだろう。
– モバイルインターネットは、雇用創造のプラットフォームになるだけでなく、教育、ヘルスケア、エネルギーなどのソリューションになる。
■ しかし、モバイル無線の帯域不足は深刻だ。
– スマートフォンは、今までのケータイより30倍もデータ利用量が多い。
– ノートPCなどでの無線利用は、今までより450倍も無線利用量を増加させた。
– 米国には2億8000万のワイヤレス無線の利用者がいる。
– ニールセンは2011年末に、スマートフォン契約者は2倍になると予測している。
– モバイルインターネットの利用はこの5年で44倍に増える。
– これらの予測値は、iPad発売前の値である。
– ドイツは、340MHzをモバイルブロードバンド用に割り当てる
– 日本は、500MHz分の帯域を4Gに割り当てる予定だ。
– 他の国は待ってくれない。
– 現在は、パニックに陥る時ではない。これからのプランを立てる時だ。
– もし、危機が来るまで何も行動しなかったら、国際競争力を保つためのコストはとても大きくなるだろう。
■ モバイルインターネットアクセスの帯域がもっと必要なのは明確だ。
– ワイヤレス業界は、800MHz帯の代替分を要求してきた。
– 500MHzをこの10年でモバイルブロードバンド用として割当るという施策を開始する。
– 放送業界が利用している300MHzは、オークションで再割当が必要だという考えの人もいる。このままでいいという人もいる。
– ナショナルブロードバンドプランは、そのどちらでもない施策をとる。
– 放送業界には放送業界に、いくつかのオプションを与える。
■ 電波オークションについて
1.ボランタリーである。誰も強制的に参加させられることはない。
2.
3.
4.オークションプロセスは、公開され透明性を保つ
放送業界に、多様なビジネスモデルを提供し、
■ ブロードバンドプランに関する誤解をまとめると次の4点になる。
1.オークションは放送業界を破綻させる。
2.ブロードバンドプランが、言論の多様性とローカリズムを毀損する。
– 放送業界がビジネスモデルを多様化させることは、業界を強化し、資金面で言論機関の多様性と公共性を保つことになる。
– デジタル時代の分散化は、放送業界のビジネスモデルの脅威になっている。放送業界がマストキャリールール無しで、デジタルに新たな投資をするのはチャレンジングだ。
– 放送局は今まで通りのビジネスを続けてもよい。
– 帯域をシェアする放送局は新たなビジネスチャンスが広がり、視聴者にも新たな選択肢が増え、利益を増えるだろう。
– 他の放送局と違うサービスを展開し、差別化を図ることも可能だ。
3. オークションが放送局をモバイルDTVを展開する妨げになっている。
– 我々は、放送局のビジネスを保護することではなく、イネイブラーになることだ。
– 放送局はモバイルDTVを割当の6MHzで展開できている。
4. 消費者は新たな機器を買わなければならない。
– デジタル放送を受信するには、STBやコンバーターでチャンネル再設定するだけで済む。
– 新たなデジタル移行は、放送局に負担がかかるが、そのコストはオークション収入で賄う。
■ オークションが機能しなかったらどうなるのか?
– 米国はオークションが機能しなければ存在しえない。
– オークションには放送局の参加が必須だ。
– オークションに参加する放送局は、収益源が多様化され、コストが下がり、放送事業も続行できる。
– オークションは、家電、放送、テクノジー業界、起業家などへ、また、消費者、納税者に多大な利益をもたらすだろう。
– この方向性は、私がどうなろうとも、変わらない。
– なぜなら、モバイルインターネット、データ利用などが増加する傾向は変わらないからだ。
– 放送業界は、ブロードバンドプランの本質を理解してもらい、オークションに参加してほしい。
■ エンジニア・フォーラム
– 技術的課題の解決のため、FCCはエンジニア・フォーラムを開設する。
– 放送局、モバイルの技術者が、具体的な課題を検討し、最適な解決策を見出す。
■ ほかの課題
再送信費用の問題(ケーブルテレビ局が地上波テレビ局に再送信費用を支払っている。ケーブルテレビは値下げを求めている)
– 放送局とケーブルオペレーターは、長年の付き合いがある。
– 普通のテレビが無料なのに、ケーブルテレビ視聴料が上昇する傾向がある。再送信コストのためだ。
– 20年来、この問題の争点となっているのが、マストキャリー規制だ。
– 私はこの問題を消費者利益に適い、ケーブル、テレビ局双方にとってフェアなように解決したい。
メディアオーナーシップ
– メディア保有は、市場規模などと関連して決められている。
– 今までのコミュニケーションの付加価値、は今でも色褪せていない。
– メディア保有規制とブロードバンドプランは、両立できる。
– いまメディア業界で大きな問題のひとつが、ジャーナリズムの存続だ。
– テレビ局、新聞社、雑誌社は、記者を大幅に解雇している。
– この時期こそ、ローカルテレビ局の出番ではないか。
– 有料、広告放送に限らず、ローカルテレビ局が地域コミュニティに果たす役割は大きい。
– 現在はローカルニュースの黄金時代の幕開けだ。
■ まとめ
– 現在は、危機の時代だ。
– アメリカは、教育、ヘルスケア、エネルギー、安全、経済に問題を抱えている。
– 新しいテクノロジーが問題の解決につながる。
– 放送局と地域コミュニティが結びつき、新たな価値を生み出す。
– イノベーションの変化は、ますます速くなる。
– 我々の行動が、国民全体の利益のためになると考えている。
■ 参考
FCC委員長やNAB CEOの講演(ケビン・マーチン氏 at CES 2009とかゲナコウスキー氏 at CES 2010)はこちら
米国のナショナル・ブロードバンド・プランはコチラ